腫瘍について
当科で扱うできもの(腫瘍)は、主に皮膚や皮下組織(脂肪など)に生じた体表の腫瘍です。良性と悪性に分類され、良性腫瘍は一般に増殖が緩やかで生命をおびやかすようなことはありません。
一方の悪性腫瘍は近くの組織に浸潤したり、進行すると転移して増え続けたりしていきますので、生命にも影響してきます。
一見、ホクロやしみなどと紛らわしい皮膚がん(悪性黒色腫など)もありますので、皮膚に気になる異変が生じましたら、早めにご相談ください。
※当院では、皮膚腫瘍に対するダーモスコピー検査のほか、深部の腫瘍に対するMRI検査や超音波検査にも対応しております。
主な良性腫瘍
ホクロ
メラニン色素を産出する色素細胞が変化した母斑細胞の塊がホクロで、メラニン色素を含むことから、褐色・茶色・黒色などの色をしています。医学的には黒いあざとともに色素性母斑と呼ばれます。
ホクロは生まれつきあるものと成長の途中で発生するものがあるほか、形状も平らなものから隆起したものまで様々です。痛みを伴うことはありませんが、子供の頃はまっ平らだったものが、大人になると母斑細胞が増えて隆起するということもあります。
ホクロのがんを疑う目安としては、非対称、不規則な境界 色むら、大きさ(6mm以上)などがあります。医師でも判断が難しい場合があります。少なくとも、足の裏のホクロが急に大きくなってきた場合や、大きさが6mm以上ある場合には医療機関への受診をおすすめします。
- 治療について
- ホクロに対する治療法も治療する医師により様々です。
切除術を行う場合もありますし、悪いものでなければ様子を見る場合もあります。生まれつきの黒あざに対しては、複数回にわけて切除する分割切除術やエキスパンダーを用いた切除術を行います。
皮膚腫瘍外科、レーザー治療の専門医として治療法をご説明いたします。お気軽にご相談ください。
粉瘤
粉瘤は、アテロームとも呼ばれ、皮膚が陥入してできた袋に老廃物や皮脂が溜まることによってできる半球状の良性腫瘍を言います。大きさは直径にして1~2cm程度ですが、ごく稀に10cm以上になることもあります。発生しやすい箇所は、顔、首、背中、耳の後ろ、鼠径部などで、同時に複数個が多発することもあります。このほか、外傷が原因で、手のひらや足の裏にできることもあります。
中央に黒点状の開口部があるのが特徴で、これを指などで強く圧迫して潰そうとすると臭いを伴う粥状の物質が排出されます。ニキビとよく似ていますが、黒い点がある場合は粉瘤です。自覚症状はみられませんが、細菌による二次感染をきたしたり、嚢腫壁を破ったりすると発赤や痛みなどが出ます。これを炎症性粉瘤と言います。
- 治療について
- 炎症を起こしていなければ、手術で腫瘍の本体である袋を切除します。
炎症を起こしている場合は、抗生物質の内服をします。それでも炎症が治まらない場合には、小さく表面を切開して膿を出して炎症を抑えます。後日、袋を取る手術が必要になる場合があります。
脂肪腫
脂肪腫は、皮下脂肪織や筋肉内に生じる良性腫瘍です。ゆっくりと大きくなるため、40~50才代になって気づいて医療機関を受診する方が多いです。多くの場合は、痛みなどの自覚症状はありませんが、まれに血管を多く含むもので痛みを伴う場合があります。
- 治療について
- 脂肪腫の治療では、悪性である脂肪肉腫との鑑別が重要です。
急に大きくなってきた場合やサイズの大きい場合、筋肉内などの深部にある場合では、MRI検査などの画像診断が必要です。局所麻酔による手術で通常行いますが、筋肉内などの深部の脂肪腫や、サイズが非常に大きい脂肪腫では全身麻酔下での切除が必要になる場合があります。
主な悪性腫瘍
日光角化症
日光などの紫外線を浴び続けることで発症する皮膚疾患で、皮膚がんのごく早期の病変でもあります。患者様の多くは50歳代から症状が現れるようになり、70歳以上の方が圧倒的に多いです。
痛みや痒みといった自覚症状はなく、皮膚の症状としては表面がカサカサして赤くなったり、かさぶたが見られたり、直径数mmから1cm程度の円形で輪郭のぼやけた発疹などが、日光を浴びやすい、顔面、耳介、前腕、手背部の皮膚に発症します。
- 治療について
- まずは、ダーマスコピー検査などで日光角化症を疑う場合には、まず皮膚の一部を切り取って顕微鏡で調べる検査(生検)を行います。ベセルナクリームという外用剤による治療をまず行います。ベセルナクリームでの完全消失率は57.1%と報告されています。腫瘍が残った場合には、手術による切除を行います。
顔や手などの露出部に多いため、皮弁手術や皮膚移植術など、見た目を損ないように注意して手術を行います。
ボーエン病
日光などの紫外線をはじめ、ヒトパピローマウイルス感染、ヒ素中毒などが原因で起きると言われている表皮の内部に発生するがんの一種で、増殖が表皮内に留まっている状態のものをボーエン病と言います。中高年世代の患者様が多いのも特徴です。なお、ボーエン病は早期の有棘細胞癌と考えられています。
ボーエン病では、表面が赤くてザラザラした状態の皮疹が見られ、形状は円形だけでなく、いびつな形もあります。胴体によく見られますが、手や陰部などにもできることがあります。見た目がよく似ているので、湿疹と間違われることもあります。
- 治療について
- 治療は手術による切除が原則です。
手術では、病変の辺縁より数mm離して広めに切除を行います。
基底細胞がん
基底細胞癌は遠いところへの転移は少ないが、深部に成長しやすいという特性がある皮膚がんの一種です。日本人の基底細胞癌の9割は黒色などの色を呈するため、色のある皮膚腫瘍との鑑別が重要です。まれに色のない基底細胞癌もありますが、ダーモスコピーによる検査が有効です。
高齢者の方に多くみられ、50~70才代の方が全体の8割を占めています。
- 治療について
- 治療は手術療法による切除になります。
基底細胞癌は顔面に発生することが多いことから、見た目を損なわないように注意して再建手術を行います。転移の可能性は少ないので病変を取り除くことができれば、根治の確率は高まります。