顔のキズ
交通事故やスポーツによる事故、もしくは転倒など、顔にキズを負うことは少なくありません。顔に負った傷は、見た目だけの問題ではなく、患者様の心にも深い傷跡を残します。 当院では顔のキズに対して、キズアトの治療も含めて対応いたします。
顔のキズで行う主な治療
- 擦り傷
- 皮膚の一番外側にある表皮がこすり取られ、はがれた状態が擦り傷です。傷自体は浅いですが、キズの中に砂やゴミが入ってしまうことがあります。受傷早期であればよく洗浄してブラッシングすることで砂やゴミを取り除くことができますが、放置するとキズの中に埋入してしまい、刺青のように残ってしまいます。初期治療が大事ですので、お早めの医療機関への受診をおすすめします。
- なお、当院では創傷(体表のけが)処置については、湿潤治療※も行っています。湿潤治療とは、ヒト(動物)の「自己治癒能力」を最大限に生かす治療法であり、けがの治りが早く、痛みが少なく、しかもきれいに治るという特徴があります。
※湿潤療法:傷口を水で洗い流し、創面を専用の創傷被覆材(ドレッシング材)で密封する方法です。これまでの傷を消毒して乾燥させ、瘡蓋(かさぶた)を作って治す治療とは異なり、消毒によって傷を深くすることが無いので、痛みも少なくて済みます。
- 切り傷、挫創
- ガラスや刃物など鋭い器物による体表の傷のことを切り傷と言います。傷口が鋭く切断されているので、周辺組織につぶれのないことが特徴です。反対に、鈍的な外力で皮膚が裂けた状態を挫創といいます。
切り傷や挫創は、擦り傷と同様に日常的に誰もが経験するものですが、損傷した組織の深さと幅により重症度は異なります。筋肉などの深部まで損傷をしている場合に、皮膚のみを縫合すると後に陥没してしまう場合もあります。
当科では、損傷している組織を確認して丁寧に縫合し、さらにキズを目立ちにくくする真皮縫合も行います。抜糸後もキズアトのケアは重要ですので、通院による経過観察を行います。
手足の外傷
手足の外傷では、切り傷や皮膚欠損の治療を中心に行います。
手足の外傷で行う主な治療
- 切り傷
- 基本的には縫合処置を行います。しかし、神経や腱などが損傷を受けていることもあり、神経、腱の完全な断裂をきたしているのであれば、緊急に縫い合わせる処置が必要になることがあります。また、指などで血管が完全に切れている場合には、顕微鏡下での縫合が行える総合病院へご紹介いたします
やけど
やけど(熱傷)とは、熱などの刺激により皮膚や粘膜が損傷する状態を言います。皮膚に一定時間以上高温のものが触れることによって起こります。
症状の深さによって、治療方法が異なるのがやけどの特徴で、主に1度~3度に分類されます。1度は表皮のみのやけどで、皮膚が赤くなるほか、ヒリヒリとした痛みもあります。2度は真皮に達するやけどで、赤みやむくみだけでなく、水ぶくれも生じます。3度については、皮膚のすべてが損傷する状態をいいます。この場合、乾燥や痛みを感じることはありません。
- 治療について
- 熱湯などでやけどをしてしまった場合、すぐに冷やすことが大事です。アイスノンや氷などを直接当てて冷やすのではなく、水道水などのきれいな流水で10~30分冷やして洗うことがすすめられています(小さいお子さんでは、低体温にならないように注意が必要です)。冷やしたあとは、そのままきれいなタオルなどで保護して医療機関を受診しましょう。やけどをしてしまった時の適切な対応がやけどの治療には重要です。
- やけどが広範囲の場合は、やけどをした部分の炎症によって血管内の水分が移動して減少し、循環障害から血圧低下を来たすおそれもあるので、全身管理が必要です。このような場合は、入院施設のある医療機関への受診が必要です。
難治性潰瘍
慢性化したキズで、なかなか治りにくい状態を難治性潰瘍と言います。
このような場合、不適切な治療のせいで潰瘍が長引いているケース、あるいは適切な治療を行っているのにもかかわらず治療が効を奏さないといったことも考えられます。
難治性潰瘍の原因としては、褥瘡(床ずれ)、糖尿病や動脈硬化による潰瘍、放射線治療を受けた患者様に生じる放射線潰瘍、静脈うっ滞性潰瘍、膠原病やリウマチに合併する潰瘍などがあります。時には皮膚がんが見つかることもあるので注意が必要です。
さらに潰瘍などの治癒を妨げる因子としては低栄養、感染、ステロイドや免疫抑制剤の服用、機械的刺激などが挙げられます。よく発症する部位は、下腿や足です。組織に余裕が無く、起立や歩行によりうっ血を生じやすいことや、他の部位に比べて血行が悪くなりやすく、一度潰瘍が生じると治りにくいことなどが、その理由です。
難治性潰瘍の治療では、最初に潰瘍の原因・誘因、そして治癒を妨げている原因を調べて、それらを取り除くことが大切です。
キズアト・ケロイド
一定の深さを越えたキズの場合は、キズアトを残して治癒します。
キズアトによってひきおこされる形の変形や皮膚緊張の増加状態を瘢痕拘縮と呼びます。これは一般的にひきつれと呼ばれます。治療では、外用剤やテープによる保存的の治療のほか、瘢痕を切除してひきつれを伸ばす皮弁形成手術や皮膚移植などの手術療法を行います。
また、傷が治癒する過程で傷を埋める組織が過剰に増殖し、しこりのようになったものをケロイドもしくは肥厚性瘢痕と言います。ケロイドと肥厚性瘢痕を区別する明確な基準はありませんが、一般にゆっくり進行を続けて傷の範囲を超えて周囲へと拡大するタイプをケロイド、組織の増殖が一時的で、傷の範囲内に限られるタイプを肥厚性瘢痕と呼びます。
なお、ケロイドは、肩や胸、恥骨部などの比較的皮膚の緊張が強い部位に発生しやすい傾向があります。手術やけがの跡のほか、にきび跡や本人が気づかないような小さな傷からも発生することがあります。特徴としては、表面に光沢のあるやや赤いしこりがあり、端の部分はなだらかに盛り上がり、周囲の皮膚は赤みを帯びています。
このような疾患の治療には、テープによる保存的治療やステロイド剤などによる薬物療法のほか、手術治療があります。当院では診察の結果、患者様に適切と思われる治療法を行います。